テニス指導における心理的要素の重要性 – 飽き・意欲・時間感覚

テニスの技術向上において、身体的な練習だけでなく、選手の心理状態を理解し適切に管理することが極めて重要です。本記事では、指導現場でよく直面する「飽き」「意欲」「時間感覚」という3つの心理的要素について、その特徴と対処法を詳しく解説します。

目次

飽きは成長の大敵

基礎練習期間に見られる現象

秋になり、大会シーズンも終えると、スクールでは基礎の見直し期間に入ります。基本動作を徹底的に取り組み、試合で崩れたフォームや大会期間に取り組めなかった部分に着手する時期です。

しかし、この時期には避けられない問題があります。どうしても地味な練習が増え、反復練習の時間が増えてしまうのです。最初は一生懸命に取り組んでくれる選手たちも、その期間が進むにつれて徐々に集中力が途切れてきます。そんな時にちょっと「飽きて」きたのかな?と感じることがあります。

人間の本質的な特性

誰しも、人はそういう生き物です。同じことをずっと繰り返し続けるようにはできていません。特に近年は、様々なアクティビティを気軽に経験できる時代なので、「新しい経験を求める」欲求はより大きくなっています。

新しい環境への挑戦の重要性

やはり人のモチベーションを高めることが行動力の源になるので、「新しい経験を求める」ことは大切な欲求と言えるでしょう。

テニスにおいても、環境を変える、慣れない環境に身を投じることは、そうした欲求を満たします。最近は、ジュニア世代でも地域を離れ、海外にテニス留学するケースが増えていますが、とても良いことだと思います。

「飽きない」環境作りの戦略

自分を常に「飽きない」環境に置くことは、すぐに飽きて、それが原因でパフォーマンスを下げることが多い人間にとって最善の方法です。

ただし、その環境に対して怖さが必要です。環境を変えることに対して勇気を持って一歩踏み出す。それを越えるたびにモチベーションは高まります。成長の道を自ら切り開く思考が何よりも大切なのです。

高い意欲が生み出す成長

「もっと練習がしたい!」という気持ち

素直にコーチのアドバイスを受け入れ、自分で試行錯誤しながら、何となく「いい感じ」でコツを掴みかけている。それをもっと納得できるまで、身体に定着するまで練習したいという意欲の現れです。

そういう気持ちで練習に取り組もうとする姿勢を見ることができるのは、指導者にとってこの上ない嬉しさがあります。

「腑に落ちる」まで練習することの価値

コーチは多くの経験を積んできているので、成長に必要なことを伝えることができます。しかし、選手自身が納得できなかったり、違和感を感じることも多くあります。

大切なことは、納得できるまでとことんやってみることです。すると、「腑に落ちる」ようになってきます。そして、「腑に落ちない」ことは自分の意志で排除できるようになってきます。これが重要です。

確信を持つことの重要性

「腑に落ちる」とは、腹の底から納得するということです。どんなことでもそうですが、「確信」がないと前には進めません。

言われたままにやる、というのでは本当に頑張ろうという気持ちは湧いてきません。だから、心から納得する、「腑に落ちる」まで練習をする必要があります。

高い意欲を持つ選手は、その練習から得た先に「何か」があると感じているのかもしれません。「腑に落ちて」いるのであれば、それをとことんやってみるといいでしょう。きっと「何か」が変わってくる、そんな練習が続けられることを願っています。

時間感覚から読み取る練習の質

「あっという間」と感じる練習

子供たちは、今日の練習は短く感じたとか、長く感じたとか言います。では、どんな練習だと短く感じて、どんな練習だと長く感じるのでしょうか?

よく言われるのは、楽しいと時間感覚が失われ、時間が短く感じるということです。例えば、ゲームに夢中になっていると、時間はあっという間に過ぎた感覚になります。

ということは、子供たちが「今日の練習は短かった」と言う時は、練習を「楽しい」と感じていたということです。できる限りそういうふうに感じてほしいものです。

時間が長く感じる練習の特徴

では、逆に「練習が長く感じる」というのは、どういう練習でしょうか?

ある実験の検証では、運動の強度があり、緊張感があって、集中力が必要な場合は時間の流れを長く感じるそうです。意外な検証結果でした。

2つの集中の違い

時間が短く感じる時の集中と、長く感じる時の集中には違いがあります。

短く感じる集中:「好きなこと」「楽しいと感じること」「興味があること」に集中している時は、「楽しい」という感覚が強いので、時間を短く感じます。

長く感じる集中:そうではなく、ただ緊張感や集中を強いられるような状況は時間を長く感じるということです。

どちらも必要な練習時間

スポーツ技術の向上にとって、どちらが大切ということは言えません。

緊張感の伴う練習は確かに時間を長く感じて、苦痛なことも多いかもしれませんが、その中から自分のすべきことや、向上のきっかけが見つかることも多いのです。

テニスは楽しいことばかりではなく、苦しいこと、耐えないといけないことも多くあります。そういう時間は必要不可欠です。

バランスの重要性

しかし、こうした時間ばかりだと、やる気が失せて、成果が得られないことも多くあります。なので、そのバランスが大切です。

子供たちには「テニスが楽しい」と感じながら頑張ってほしいので、「今日の練習は短かった」と感じるような練習を心がけようと思います。これは指導者自身も含めてです。

まとめ

テニスの指導において、技術的な側面だけでなく心理的な側面を理解することが重要です。「飽き」を防ぐための環境変化、「高い意欲」を育む納得感のある指導、そして「時間感覚」から読み取る練習の質。これらの要素を適切にバランスよく組み合わせることで、選手の持続的な成長を促すことができるのです。

指導者は常に選手の心理状態を観察し、それぞれの状況に応じた最適なアプローチを選択することが求められます。技術と心理の両面からアプローチすることで、真の成長を実現できるでしょう。

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