テニス練習の効果的な指導法 – 基礎から試合まで

テニスの練習は何のために行うのでしょうか。多くの指導者が直面するこの問いに対して、明確な答えを持つことが選手の成長を左右します。本記事では、練習の目的を整理し、それぞれに応じた効果的な指導法をご紹介します。

目次

練習の2つの目的

テニスの練習には、大きく分けて2つの目的があります。

1. 基礎を鍛える 2. 試合に勝つため

この2つの目的を明確に分けて練習メニューを組むことで、より効果的な指導が可能になります。

基礎を鍛える練習

最も重要な基礎:「構え」

どんな練習にもつながる基礎として、「構え」ほど重要なものはありません。子供たちの練習を観察していると、この「構え」があいまいで、いい加減になっているケースが多く見られます。

なぜ構えが大切なのでしょうか。それは**「構えは意識を表す」**からです。正しい構えができているかどうかで、その選手の意識レベルが分かります。すべての技術向上は、まずここから始まります。

球出し練習ではフットワークを意識

手出し練習・ラケット出し練習において最も重要なのは、フットワークを意識することです。

球出し練習は来る場所が分かっている状態で行うことがほとんどです。そのため状況判断の負荷がない分、ボールに対して後ろから入って踏み込んで打つフットワークを意識して行います。

もちろんラリーやゲームになるとオープンスタンスが必要になるシーンはありますが、こういった基礎練習の時には後ろから前に入ることで、ハイレベルなラリーになっても質の高いボールを打てるようになっていきます。

30秒ラリー練習

この練習は、ストレートラリーで30秒間に何球ラリーできるかを競うものです。コーチ側で目標を設定することで、選手たちは以下の意識で練習に取り組みます:

  • ミスをしない
  • ショットのクオリティを落としすぎない
  • 継続的にラリーする

また、この練習では前述の「構え」や「フットワーク」がラリーの中でも実際にできているかをチェックする重要な機会でもあります。球出し練習で意識していた基礎技術が、相手がいる状況でも維持できるかを確認し、必要に応じて修正を行います。

試合に勝つための練習

ここまでは基礎に重きをおいた練習内容の話でしたが、ここからは試合で勝つため、ポイントを取るための練習について説明します。

ここで重要なことは、選手自身の脳内が基礎練習とごちゃまぜにならないことです。ポイント形式の練習なのに基礎動作のことで頭がいっぱいになり、自分のことで精いっぱいで相手をまったく見れていないという状態にならないよう注意が必要です。

この切り替えを成功させるために、コーチは練習の意図をしっかりと説明してあげる必要があるでしょう。

実戦を想定した練習設計

「試合に勝つ」ことが目的の練習では、「試合を想定する」ことが何より大切です。ただポイント形式の練習をするのではなく、実際の試合で起こりうるシーンを具体的に想定します。

戦術練習のメニュー

クロス半面勝負 2vs1シングルス

これらの練習は、限られた範囲と状況の中で、どのようにポイントを取るかを学ぶものです。戦術の幅と最高効率を見つけていく練習であり、重要な判断力を養います。

ただがむしゃらにプレーして勝っている選手は2流、それに負けているのは3流と言えるでしょう。何も考えていない相手には確実に勝てるようになることが必要です。

マッチ形式練習

制限のない中で、半面勝負と2vs1勝負の練習成果を活かせるかがポイントです。自分が良い判断をしても取られることもある中で、どう折り合いをつけて試合に勝つか。これは忍耐との勝負でもあります。

この練習で最も大事なことは、とにかく勝ちにこだわることです。

  • 攻めるときは徹底的に攻める
  • 守るときは徹底的に守る
  • 試合の中での駆け引きをする

本当に必要な判断力は、勝ちにこだわって初めて身に付くものであり、訓練の積み重ねによって培われていくものです。本番になって勝負弱い選手は、普段の練習での勝ちへのこだわりが弱いように感じます。

モチベーション管理の重要性

こだわりを持つための原動力

こだわりを持つためにも「モチベーション」は最低限必要で、人が行動する原動力となるものです。コーチはそれを高めるために様々な工夫をしなければなりません。

モチベーションを高める3つのポイント

モチベーションを高める方法については色々と提唱されていますが、人間を相手にすることだけに、なかなか難しいものです。重要なポイントは以下の3つです:

  1. 「本当に自分が望むものであること」
  2. 「実現可能な目標であること」
  3. 「実現の可能性を信じる」ための具体的な道筋

「可能性を信じる」ためには、その目標に向かうまでの道筋が具体的になっていなければなりません。ただ漠然と可能性を信じてタナボタを待っていても、いずれあきらめざるを得なくなってしまいます。これは、その目標が叶う根拠が自分の中にないからです。

変化を恐れない心を育てる

普段の練習マッチを見ていると、多くの選手が「変えるのを怖がっている」と感じます。しかし、「今」の力をもっと高めるためには、「今」を変えていくことが必要です。

変化には一時的な不調や負けることへの恐怖や不安が伴います。これは当然のことです。重要なのは、たくさん練習をすれば強くなるという単純な考えではなく、「自分がこういうプレーをしたい!」という強いイメージを持つことです。

そのイメージに向かって「今」を変えていく気持ちがなければ、本当の意味で強くなることはできません。時には無茶に見えるかもしれませんが、がむしゃらにやってみることも必要です。不安や恐怖、うまくいかないイライラを振り払うかのように、がむしゃらに挑戦する姿勢が強くなるために必要なのです。

指導者の役割

コーチは、選手の「可能性を信じる気持ち」を高めるために、色々と工夫して指導する必要があります。うまくいかないことも多いですが、コーチ自身が、その「可能性を強く信じること」が最も大切です。

強い気持ちを持って指導していかなくてはならないと思います。

まとめ

テニスの練習は「基礎を鍛える」と「試合に勝つため」の2つの目的を明確に分けて取り組むことが重要です。基礎練習では構えから始まり、変化を恐れない心を育てる。試合練習では実戦を想定し、勝ちにこだわる姿勢を身につける。そして、すべての根底にあるのは選手のモチベーション管理です。

指導者は選手の可能性を信じ、具体的な道筋を示しながら、強い気持ちを持って指導することが求められます。これらの要素が組み合わさることで、真の成長が可能になるのです。

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