テニスの上達において、技術練習と同じかそれ以上に重要なのが「意識」の変革です。本記事では、ショットの精度向上から緊張のコントロール、試合観戦の仕方、そして練習への取り組み方まで、意識を変えることで劇的な成長を促す方法について詳しく解説します。
狙っているようで狙ってない – 精度向上の意識改革
ターゲット練習の落とし穴
ターゲットを置いて打つ練習には、メリットもありますがデメリットもあります。ショットの精度がなかなか上がらない時は、狙う場所を変えてみることが効果的です。
革新的なアプローチ:ネット上のターゲット
従来の「自分の打ったボールが落ちる場所」をターゲットにするのではなく、ネットの上にターゲットを置く方法があります。
この方法の利点
- シンプルに狙う距離が短くなる
- ズレが少なくなる
- ボーリングのスパットを目安に投げるのと同じ要領
この方法は確実に効果があります。難点はターゲットをセットするのが面倒なことですが、狙う場所が変わり、狙う場所が増えることで、狙う意識が強くなっていきます。
「意識」の重要性
コントロールできるようになると狙うことが無意識にできますが、まだ未熟な場合だと「狙っているようであまり狙ってない」というあやふやな状態になることが多くあります。
重要なポイント:「ここを狙って打つ!」という「意識」を高く持って練習できるかということです。
方法よりも「意識」の重要性を、どんどん伝えていきたいと思います。
考え方で緊張もコントロール – 柔軟な思考の力
緊張する人の共通パターン
緊張して力を発揮できない人は、自分の中で勝手に選択肢を絞ってしまうことが多いと感じます。
固定的思考の例
- 「~でなければならない」
- 「こうあるべき」
このような固定的な概念に縛られてしまうことが問題です。
スポーツの現実
特にスポーツでは、思い通りにならないことの方が多く、自分が「こうあるべき」と思っている状況とはかけ離れていったりします。
そうなると、焦りからパニックになって、恐ろしくなって、逃げ出したくなるような気持ちになって、相手に向かって行けなくなってしまいます。
「受け入れる」力の重要性
そういう状況にならないためには、**「まっ、そういうこともある」**という考え方が大切です。
自分の思い通りに行かないことを「受け入れる」ことです。思い通りに行っていない時はストレスも不安もありますが、そういう状況で自分の力を発揮するには「そういうもんだ」と開き直ることができるといいでしょう。
客観視の効果
「あるがままを受け入れる」ということ
受け入れると、今の状況をちょっと離れて客観的に見たり考えたりできます。緊張して何もできない、わからないという状況からは抜け出せるのです。
そんな考え方を持って戦いに臨むことができるのが理想です。
試合を観る意識を変える – 憧れが生む成長
技術習得の課題
以下のような悩みを抱える選手は多くいます:
- 思うようにスイングできない
- 自分で思っているスイングと実際のスイングが全然違う
- コーチの指示した通りにうまく動けない
そういう子は、能力の部分もありますが、手本となるような憧れを強く抱く選手がいないことが大きな要因です。
憧れの力:実体験から
筆者のジュニア時代には、以下のような様々なタイプの選手が好きでした:
- ティム・ヘンマン
- ジェームス・ブレーク
- レイトン・ヒューイット
- ギジェルモ・コリア
テレビの前で素振りしたり、その選手のガッツポーズや仕草をよくマネしていました。
憧れが生み出す効果
強い憧れがあるからこそ
- プレースタイルは似てくる
- 自分の感性を磨くことに繋がっていく
しかし、そうした思いがないと、ガイドラインのようなものがないので、自分の理想像が出来上がりません。イメージが湧いていかないのです。それでは自分の思い通りが分からなくなってしまいます。
現代の恵まれた環境
そういった意味でも、憧れの選手を持つということは大切なことです。今はテニス史上最高のプレーヤーが多く存在する時代です。
憧れは「やる気」も高めます。「意識」を持って選手のプレーを見てほしいと思います。
楽しまない意識も大事 – 競技スポーツの本質
練習に対する一般的な誤解
練習やトレーニングは辛くて苦しいものと考える人は多いので、何とか楽しくやれるようにという感じで練習方法が提案されることがあります。
しかし、そもそも練習やトレーニングは辛いからこそいい、そう思います。
ストレスの必要性
苦しくて、ストレスが大きいから効果があるのです。もちろん、一定量を超えてしまうと効果が低下する傾向も見られるので「適度に」ということになりますが、少なくとも負荷などのストレスはある程度必要です。
何もストレスがなく、楽しいだけでは効果は期待できません。
試合での現実
それは試合でも同じです。よく「試合を楽しんでおいで!」なんて声がけすることを耳にしますが、楽しんでなんてできません。
試合の心理的現実
- 勝ちたいという欲が強い
- 成果に対する思いも強い
- 不安と恐怖が大きくなる
- ストレスも大きくなる
そんな状態で楽しくなんてできないのです。
競技スポーツの真の楽しさ
でも、そんな苦しい状況の中で、頑張れ、頑張れと自分を励まし続け、ほんの少しの運があって、何とか勝利した時、最高の達成感があります。
競技スポーツはそれが楽しいのです。
意識改革のための実践方法
狙いの意識を高める練習
段階的アプローチ
- 近いターゲット(ネット上)から始める
- 徐々に距離を伸ばす
- 複数のターゲットを設定する
- 意識的に狙う習慣をつける
柔軟思考の育成
日常での実践
- 「~すべき」思考を「~もあり」思考に変える
- 失敗を受け入れる練習
- 複数の選択肢を常に意識する
- 客観視する習慣をつける
憧れの選手を見つける方法
効果的な観戦方法
- 様々なプレースタイルの選手を観る
- 技術だけでなく、振る舞いも観察する
- マネしたい動作を実際に練習してみる
- なぜその選手に惹かれるかを言語化する
適切な負荷の設定
練習での心構え
- 楽しさだけを求めない
- 適度なストレスを受け入れる
- 達成感を重視する
- 長期的な成長を信じる
指導者としての役割
意識改革のサポート
指導者として重要なのは、技術指導と同時に「意識」の改革をサポートすることです。
具体的なアプローチ
- 選手の固定観念に気づかせる
- 多様な視点を提供する
- 憧れの選手を見つけるサポート
- 適切な負荷の設定と管理
長期的な視点
技術の向上は目に見えやすいですが、意識の変化は時間がかかります。指導者は忍耐強く、継続的にサポートし続けることが重要です。
まとめ
テニスの上達において「意識」の重要性は計り知れません。狙いの精度を上げるための意識、緊張をコントロールする柔軟な思考、憧れの選手から学ぶ姿勢、そして競技スポーツの本質を理解する心構え。
これらすべてが組み合わさることで、選手は技術的な向上だけでなく、精神的な成長も遂げることができます。楽しさだけを求めるのではなく、時には苦しさを受け入れ、それを乗り越えた時の達成感こそが、競技スポーツの真の醍醐味なのです。
指導者も選手も、この「意識」の重要性を理解し、日々の練習や試合に臨むことで、より高いレベルでのテニスを楽しむことができるでしょう
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