ジュニアテニスの「モンスターペアレント」問題を考える

目次

はじめに

お子さんがテニスを始めると、保護者の方も自然と熱が入るものです。しかし、その熱意が時として子どもの成長を妨げてしまうことがあります。ジュニアテニスにおける保護者の問題は、多くのテニスクラブやコーチが直面する永遠の課題と言えるでしょう。

コーチとしてまだまだ未熟な私が保護者について語るのは早いかもしれませんが、現場で実際に目にする問題について、率直な思いを共有したいと思います。

「モンスターペアレント」とは何か?

では、具体的に保護者問題とはどのような状況を指すのでしょうか。最も多く見られるパターンを詳しく見ていきましょう。

ケース1:子どもより熱量が高い「エゴ押しつけ」ペアレント

問題の構造

自分の子どものことなので熱が入るのは当然のことです。子どもが頑張るのを応援する保護者であれば、子どもにとっては最高の味方となります。

しかし、その熱量があまりにも高く、子どもの頑張る気持ちを遥かに超えてしまうケースがあります。すると「子どもが頑張りたいのか」「保護者が頑張らせたいのか」が分からなくなり、テニスの本質から外れてしまいます。

そして、その気持ちを抑えきれずに行動や言動に出てしまい、子どもの気持ちが尊重されない状況が生まれます。これはテニスに限らず、他のスポーツでもよく見かける光景です。

結果:子どもがテニスを嫌いになる

特にU-12からU-14で多いパターンですが、最初はテニスが楽しく、強くなって試合に勝つ喜びがモチベーションだった子どもが、徐々にテニスを強制され圧迫感を感じるようになります。

  • 「誰のためにテニスをしているのか?」
  • 「なんでこんなにテニスを頑張らないといけないのか?」

こうした疑問が湧き上がり、全力でテニスと向き合えなくなってしまいます。手を抜くと怒られるため、どんどん悪循環に陥っていきます。

子どもが直面するストレス

低年齢からテニスをしていると、テニスに対するモチベーション低下はよくある話です。しかし、そうした精神的な部分と向き合うのもコーチの重要な仕事です。

テニスで勝つために厳しい練習をして、友達と遊ぶ時間もゲームする時間も削る必要があります。テニスはミスが出るスポーツなので、思い通りにプレーできないストレスもあります。コート上では様々なストレスと戦っているのです。

それなのに家に帰っても親から:

  • 「もっと一生懸命やれ」
  • 「フォアハンドが、サーブがどうのこうの」
  • 「あの時のミスはもったいない」

まるでコーチや解説者のような発言を受け、心休まる場所がありません。子どもにとっては精神衛生的に最悪の状況です。

理想的な保護者のサポート

本当に子どもに必要なのは:

  • 「よく頑張ったね」
  • 「ナイスプレー!おめでとう」

結果や内容がどうであれ、子どもの頑張りに対して理解を示してあげることです。それが子どもにとって一番の救いになり、「自分の行動を理解してくれている」という安心感に繋がります。

海外トップ選手の事例から学ぶ

海外のトップ選手にも親子二人三脚で強くなってきたケースはありますが、全体を見るとレアケースです。多くの場合、テニスのことはコーチに任せて、家族といる時には最もリラックスできるコミュニケーションを取っていることが多いように感じます。

自己点検のポイント

保護者の皆さんには、以下の点を見直してみていただきたいと思います:

  • 自分はすごく頑張っている!
  • 良い環境を用意してあげている!
  • なのになんで頑張れないんだ!
  • なんで勝てない、強くならないんだ!

このような気持ちが、自分のエゴを押し付けていないか、一度立ち止まって考えてみてください。

問題の深刻化:自主性が育たない

甘えの構造

親が頑張りすぎると、子どもも「親がやってくれるから」と様々な甘えが出てきます:

  • 練習コートを用意してくれる
  • 練習相手も親が見つけてくれる
  • 試合の送り迎えもしてくれて当たり前

これらは全て当たり前ではありません。親のサポートに感謝して、自ら動き出す自主性が育たないことが大きな問題です。

テニスへの影響

この問題はテニスにも露骨に表れます。自分で考えて成長し、自らの感覚を頼りに戦う能力は、テニスにおいて必要な要素の一つです。しかし、この能力が育たないため

テニスの練習時間が確保できていれば、それなりの成長はする。しかし、成長スピードが上がらない。周りの成長についていけず、どんどん置いていかれてしまう。

一生懸命にテニスをやれば勝てるようになれるのは、一握りの才能を持っている選手だけです。

理想的な関係性の構築

三者の連携

子どもの最も近くにいる保護者の協力は、ジュニアを育てる上で必要不可欠です。子どもがテニスに集中して全力で練習に取り組めるように、子ども・保護者・コーチの三者で連携し、信頼関係を築けるのが理想的な形です。

役割分担の明確化

  • コーチ:技術指導とメンタル面のサポート
  • 保護者:生活面のサポートと精神的な安らぎの提供
  • 子ども:自主的な取り組みと成長への意欲

この役割分担を明確にすることで、子どもにとって最良の環境を作り上げることができます。

まとめ

ジュニアテニスにおける保護者問題は複雑で、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、子どもの気持ちを第一に考え、適切な距離感を保つことで、多くの問題は改善されます。

保護者の皆さんには、子どもの「心の安らぎの場」であることを最優先に考えていただきたいと思います。技術的な指導はコーチに任せ、家庭では温かい応援と理解を示すことが、子どもの長期的な成長に繋がります。

今後も、よくある保護者のパターンを例に挙げて、この問題について考えていきたいと思います。皆さんと一緒に、子どもたちにとって最良の環境を作り上げていければと思います。

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